俺は美容師だ。
町の片隅にあるチッポケな美容室を、個人で経営をしている。
平日の昼間は客が少なくて暇だ。
こうやってPCをいじるくらいしか、やることがねぇ。
チリンチリン♪
来客だ。今の時間帯に来るとは・・・珍しい。
「いらっしゃいませ!」
「ピカァ!」
「!?」
「ピッカチューウ♪」
「え・・・ポケモン・・・?」
よく見ると手に金と手紙を握っている。ピカチュウは手紙を差し出してきた。
【美容室ギャクピィ様へ】
いつもお世話になっております。
今日は私の可愛い家族のピカちゃんのシャンプー・カットと、ブローをお願いいたします。
川居毛 梨代
なんてこった・・・超ワガママクレーマーババアの川居毛んトコのポケモンか・・・
面倒くせぇが、ババア本人が来るよりはマシだ。
金もちゃんと持ってきてるみたいだし、ちゃんと仕事しなきゃな・・・
「では、こちらへどうぞ。」
ピカチュウの毛を濡らすため、シャンプー台に案内する。乾いたままの毛ではカットが困難なのだ。
ピカチュウをシャンプー椅子に座らせ、タオルとクロスを巻きつける。
「ピギャア!ピガァ!」「わぁ!し、失礼いたしました・・・!」
クロスの巻きつきが苦しかったようだ。
苦しがりなところや不満の漏らし方が、川居毛のババアそっくりで腹が立つ!!
「ピガチュッ!!」フンッと鼻を鳴らして、早速ご機嫌斜めになりやがった。飼い主そっくりすぎて殺意が沸く。
「では・・・いすを倒します。」
ウィーン
クソネズミを寝かせて顔にガーゼを被せる。
そして俺は・・・シャワーの温度調節レバーを「40℃」から「MAX」に回した。
「では・・・頭を濡らしますネェ~♪」
シャアアアアア・・・
ネズミの頭を濡らす。
シャワーから出るお湯は最初は40℃前後だ。
しかし徐々に・・・熱湯へと温度が変わる!!!!!!!!
「ッピ!?!?
ヂュアーーーーーーーー!!??」「ハハハ!!!いかがなさいましたかお客様ー!!ハハハハハハハハ!!」「ピヂャッ!!ピッヂュアーーー!!!」ネズミはばたばたと暴れだした。
俺は左手でネズミの身体を押さえつけ、右手でシャワーのノズルを頭の位置にキープ。
ネズミの頭皮の色がおぞましい赤色に変色してきた。
俺は普段から熱湯に慣れてるから、なんてことない。
「ヂャピャアァァァァァ!!ピャアアアアア!!!!!」叫んで暴れるせいで顔のガーゼがヒラリと落ちた。ネズミは醜い泣き顔を晒している!
「ア、テガスベッタ♪」ビシャッ!と顔にも一瞬だけ熱湯をかけた!
「ッチャアァアアーーーーーーーーー!!!!!!!!」「アハハハハハハハハ!!!キモチイイですかぁ!?それはヨカッタヨカッタアァーーー!!」「ビチュウゥゥゥーーーーー!!!」「ははは・・・!さて、シャンプーはおしまいです!!次はカットをしましょうね!!」
いすを起こし、ネズミを無理矢理引っ張ってセット面のイスに座らせる。
ネズミはヒックヒック、と泣いていやがる。キメェ。
「ビガ・・・ビガァァァァ・・・・・・・」ヒックヒック・・・シクシク鏡を見た。自分の頭皮がヤケドで変色したのに気づいてさらに泣き出した。ユカイだ。
俺はネズミの毛を、テキトーにカットした。
途中で不安げに
「ぴ、ぴかぁ・・・」と鳴くもんだから
「最近はこんなポケモンカットが流行なんですよ!」と誤魔化した。
ネズミは見る見るうちに変な毛並みになっていった。
小汚いネズミの毛を見ているうちに、俺はさらにユカイなことを思いついた!
「そうだ!いつも川居毛様には御贔屓にしてもらってますから、今回は
ブリーチもサービスしちゃいますよ!!」
「ぴか・・・?」
「ブリーチをするとピカチュウ様の毛がより一層綺麗な黄色になりますよ!やっていきますか?」
「ぴかー!ピッカピッカ!!」
「そうです!wピッカピカになります!w」
さっきまで泣き顔だったのにサービスという言葉に、目をキラつかせやがった。超絶ウゼェ。
「ではお薬を作ってきますので少々お待ちください♪」
「ぴかー!」
・・・ブリーチとは、人間の髪の毛に含まれる「メラニン色素」を破壊する薬剤だ。
髪の毛は「メラニン色素」があることによって「黒い色」に見えている。
それをブリーチで破壊することにより、黒から褐色、そして徐々に金髪に近い色味になる。
メラニン色素が完全に無くなると、白髪になるのだ。
ちなみにブリーチ剤の主成分は「過酸化水素」という化学物質だ。
それをアルカリ剤と混ぜることによって、強い化学反応が生じる。
これはとても皮膚への刺激が強い。皮膚が弱い人に使うと、頭皮が裂けて出血したりもする。
俺は今回、ピカチュウの体毛を綺麗に脱色するために使うのではない・・・
「さて、お薬を作ってきました!これを毛に塗ると綺麗になりますからねぇ~♪」
では、塗っていっきま~す♪」
「ピッカチュ♪ピッカチュ♪」ワクワク
俺は刷毛でネズミの身体にブリーチ剤を塗りたぐった!!
ペタ・・・ペタ・・・・・・・・・・・・・・・
「ピ・・・・・・・
ピッヂュアァァァァーーーー!!!???」ピカチュウはイスから転げ落ちた!!
先ほどの熱湯シャワーで体の皮脂が剥がれ、皮膚は敏感になっていたはずだ。
その状態でブリーチ剤などという、強力な薬品を塗られたら・・・
どんなに丈夫な皮膚の持ち主でも、ひとたまりもない。
ピカチュウがブリーチを塗られた部分は今、例えるなら
、「無数の蛆虫が皮膚を食い破って体内に侵入している」そんな痛みに襲われているはずだ。
「ピヂュアッツ!!ピッヂュウ!!ピィィーーーー!!!!!!!!」「あらあら~♪暴れちゃダメですヨォ~♪お薬はゼ~んぶ使いますからネェ~!」
俺は残ったブリーチ剤を転げまわるネズミの上にぶちまけた!!
「ビャアアァァァ!!!!」ブリーチ剤はネズミの顔中を埋め尽くした。この薬は目に入ると失明の可能性もある。
数分後には真っ暗闇の世界に包まれるだろう。
「ギギャアァァァァッァーーーー!!!!!ヂャギュウウウウウーーーーーー!!!!」声にならない叫び声。目が染みるのだろう。良く見るとあちこちの皮膚が裂けて出血してきた。
「ア~、残念。ピッカさんの皮膚には合わないみたいですねぇ~・・・」
「じゃ、洗い流しますか!!!」
俺は先ほどの熱湯シャワーをネズミ目掛けて噴射した!!!
シャーーーーーーーーーーーーー「ッチュアァァァーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」これまでにない絶叫をし、ネズミは気絶した。
目を見たら光を失っていた。しっかり失明もしたようだ。
皮膚は最初と比べ物にならないくらい裂けまくっていた。
多分数分もしないうちに、出血多量で死ぬだろう。
数分後、俺はネズミの息の根を止まったたことを確認してから
バックヤードに向かい、髪の毛などを入れる生ごみ箱に死体を放り投げた。
数時間後に飼い主の川居毛のババアが「うちのピッカチャマが来なかった!?」と血相を変えて尋ねてきたが、
「知りません」の一点張りでしらばっくれた。
おわりあとがき
恒例の「ムカつくピカを・・・」ってヤツです。
美容師ならではのネタを織り交ぜられたので、そこそこ満足してます。
肌の弱い人に限ってブリーチしたがるんですよねー。
ちなみに今回の話、ピカチュウを陥れるために
「毛を綺麗にするためにブリーチを使いますね」という表現をしましたが、
ブリーチは「毛を綺麗にする」ために使うものではありません。
髪の毛のメラニン色素を破壊するためのものであり、使うと綺麗になるどころか、
ダメージがハンパないことになって、ガッサガサになります。
極力、ブリーチはしないほうがいいですよ。頭皮にも悪いし。
- 2012/06/06(水) 00:51:43|
- ピカ虐(短編)
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| コメント:4
> 美容師やっているんですか
それは・・・申し訳ありませんが秘密とさせていただきます!(身内に特定されると色々と詰みますので・・・)
ご想像にお任せいたします(^^)
- 2012/08/06(月) 00:27:49 |
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- ピカ虐 #-
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> 美容室ギャクピイwwwwww
たまに「ギャクピイ」でggってこのブログにたどり着く人が居るから驚きです。
- 2012/11/07(水) 23:12:40 |
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