【前編】はこちら
それから数日後、9月になり、夏の暑さも和らぐ季節になった。
俺はイチカの面会に向かう途中で、担当の看護師さんから嬉しい知らせを聞かされた。
イチカの脚が、もうすぐ治るらしい。また、看護師さんの粋な計らいで、その件は俺の口からイチカに知らせてあげてやってくれとのことだった。
おそらく、この知らせを俺は誰よりも心待ちにしていただろう。イチカは病院での生活に飽き飽きしていた。
だから、イチカが退院したら俺はイチカをたくさん遊びに連れて行ってやると決めていたのだ。
遊園地、水族館、映画館、たくさんのお店屋さん。イチカはきっと喜んでくれるに違いない・・・。
俺は高鳴る鼓動を抑えつつ、急ぎ足でイチカの病室へと向かった。
「よう・・・イチカ!」
「あ、お兄ちゃん!今日も来てくれてありがとー!」
「どういたしまして!・・・それより、イチカ!どっか行きたいところは無いか!?」
「え、えぇ・・・?急にどうしたの?」
「いいから!どっか行きたとこ!あるだろ!?遊園地とか!」
「うわぁ~!遊園地、行きたいなぁー!あ、あと水族館!動物園に行ってパンダも見たい!
あと・・・えーとね・・・そうだ!お祭りもいきたい!
・・・でも、お兄ちゃん。いちかの脚がこんなんじゃ、どこにも・・・」
「行けるんだよ」
「え・・・?」
「行けるんだよ・・・どこにでも・・・!!イチカの脚・・・もうすぐ・・・治るんだってよ・・・!!」
「・・・・・・ほ・・・ほん・・・と・・・?」
「本当だよ・・・!!もうすぐ、退院できるんだ!!そしたら、いっぱい、色んなところに・・・遊びに連れて行ってやるよ!!」
「お、おにい・・・ちゃ・・・」
イチカは俺を見つめ、片方の目から涙を流して訊ねた。
俺の目からも、イチカにつられて涙が溢れる。
「もうすぐ・・・もうすぐなんだって・・・!!イチカの脚は・・・元通りになって・・・また歩けるようになるんだってよ!!」
「・・・あ・・・ある・・・ける、の・・・?もう、すぐ・・・・・・?」
「そうだよ!!治るんだ!!どこにだって・・・連れてってやるよ!遊園地も!水族館も!動物園にも!祭りにも行って!美味しい物もたくさん食べよう!!約束だ!!俺が連れて行くから!!」
「お・・・お兄ちゃん・・・うぅ~・・・」
イチカは感極まり、号泣した。俺はイチカを抱きしめ、共に喜びをかみ締めて泣いた。
イチカの身体は、思った以上にやせ細っていた。
退院の日まで、残りわずかな日数となった。そんなある日、イチカの病室のドアに手をかけようとした瞬間、イチカと担当の看護師さんの話し声が聞こえてきた。俺はドアに耳をあて、盗み聞きしてみた。
その会話は、断片的に俺の耳に届いた。
「・・お・・・・い ます!」
「・・・メよ・・・かちゃ 」
「ど・・・ても、・・・に、るりはな・・・・・・ゼント、 たいん で お い ます!」
「う・・・・ん わか、 わ。 いん・・・・・・せいに、 わた から お がい、てみ ね」
イチカが看護師さんに頼みごとをしているように聞こえる。イチカの台詞で「るりはな」と「ゼント」という単語が聞こえてきたが・・・。
花を誰かにプレゼントしたい?それで何を、看護師さんに頼む必要があるんだ?
心の中に、モヤモヤが広がっていく。考えていても仕方ないので、もういっそのこと部屋に入ってしまおう。
「イチカー!今日も俺は見舞いに来たぞ!」
勢いよくドアを開けてしまったせいで、看護師さんも驚かせてしまった。
「わー!お兄ちゃん!今はダメ!看護師さんと大事なおしゃべりしてたんだからー!」
「それならお兄ちゃんも混ぜておーくれ♪」
「ダーメー!「だんしきんせー」だよー!」
「そんな言葉、どこで覚えたんだ・・・!」
「ひみつー!」
「なんでもかんでも秘密にするな!お兄ちゃん、寂しいよ!」
「とにかく、今はダメなの!」
俺はバツが悪くなり、とりあえず病院を出た。
こうなったらやはり、俺が先に「いちのるりはな」を見つけてやる。
イチカや子ピカよりも先に俺が見つけて、兄としての威厳を見せ付けてやらねば・・・。
俺はその日からススキ畑で花探しに明け暮れた。時たま、子ピカも花を探している姿が見えたが、あえて子ピカとは一緒に探さず、一人で探し続けた。子ピカも花を渡す相手は俺と違えど、花探しのライバルであることに変わりは無いからだ。
しかし、俺の努力も虚しく、「いちのるりはな」は見つけられなかった。
そして、とうとうイチカの退院の日が来た。その日、俺は部活を休み、放課後になったら真っ先に病院へ向かい、イチカを迎えに行く予定だった。そのまま隣町まで映画にでも連れて行ってやろうかな、とも考えてワクワクしていた。
もうすぐ、5時間目終了のチャイムが鳴る。その次は6時間目の授業、掃除、HR・・・。
その後は、イチカの笑顔が待っている。いつも以上に放課後が待ち遠しい。
俺はそのことで頭がいっぱいで、窓の外から聞こえる小鳥のさえずりも、救急車のサイレンも、体育のサッカーに励む生徒達の声も、はたまた、国語教師の耳障りなダミ声も・・・俺の耳には届いていなかった。
授業終了まで、あと10分・・・5分・・・。目を閉じれば、俺とイチカが笑顔で遊園地や水族館ではしゃぐ姿が浮かんでくる・・・。
そんな幸せ気分の俺の意識を取り戻させたのは、一件の校内放送だった。
教員のアナウンスに呼び出され、俺は職員室へと向かった。
「イチカ!!イチカアアアアァァァァァァァァ!!!!!」この世に、神は存在するのだろうか?
存在するとしたら、俺達兄妹を愛してなどいないのだろうか?
喉がおかしくなるくらいの叫びを上げながら、俺は全力で病院へと走っていた。
気分は、先ほどの授業中とは打って変わり、「絶望」で満ち溢れていた。
先ほど、受話器越しに俺と会話をした看護師さんの発言───。
「イチカが、車に撥ねられてしまった」
「意識不明の重体で、延命処置を施されている」
「しかし、時間の問題かもしれない」
全て、嘘であってほしい。心からそう願いながら、俺は走る。
一体どうして?イチカが車に撥ねられたのか?外へ出たのか?なぜだ?勝手に外へと出たのか?何のために?
溢れてくる疑問は、病院に着かなければ解決しない。ある意味、解決して欲しくない問題でもある。
息を切らして病院へと足を踏み入れる。俺の顔を見た看護師さんが、俺の名を呼び、TVドラマで良く見る緊急手術室のような部屋へと案内した。
部屋の中央では、手術台に横たわっているイチカを囲むように、数人の医者と看護師さんが立ちすくんでいた。
イチカの面倒をよく見てくれていた担当の看護師も居て、両手で顔を抑えて泣きじゃくっていた。
延命装置らしきものが、イチカの身体に幾重にも繋がれている。
「イ・・・イチカ・・・!?イチカー!!」イチカに近づき、顔を覗く。頭の側頭部いっぱいにおびただしい擦り傷ができており、下半身はビニールで見えないように覆われていた。
イチカは俺の声に反応し、うっすらと目を開けた。医者達がざわめきの声を上げる。
「ぁ”・・・・・・あ”・・・ぁ”・・・おに・・・・・・ぢゃ・・・」
「イチカッ!?イチカァ!!しっかり・・・しっかりしろ・・・!!なんで・・・こんな・・・!?」「お”、お兄・・・ぢゃ・・・に・・・は、な”・・・・・・」
「はな・・・!?『花!?』な、なんだ!?」「いちかちゃん!喋らないで!!わ、私が・・・説明するから・・・!!」
「か、看護師さん・・・!!イチカは・・・何で・・・!何でこんなことに・・・!!」
「う、うぅ・・・さっき・・・イチカちゃんの脚が完治した時・・・!イチかちゃんにお願いされて・・・一緒に・・・ススキ畑に行ったんです!「どうしてもお兄ちゃんにプレゼントしたい物があるから、それを探しに行きたい」って・・・!!」
「はぁ!?俺、に・・・?プレゼント・・・!?」
「そう、です・・・!うぅっ・・・!!脚が治った証明に・・・いちかちゃんが歩いて「いちのるりはな」を見つけに行って・・・それをお兄ちゃんにプレゼントしたいからって・・・!
院長にも許可をもらって・・・!私がススキ畑に連れて行ったんです・・・!!」
「看護師さんが・・・居たのに・・・何で、こんな・・・!?」
「うぅっ!!ごめんなさい・・・!!本当に・・・!!本当にごめんなさい!!
ススキ畑で、イチカちゃんは・・・奇跡的に「いちのるりはな」を見つけたんです!
そして・・・大喜びして病院に向かう途中、道路沿いの草むらから・・・ポケモンが・・・飛び出してきて・・・!!」
「・・・!!! ポケ・・・モン・・・!?」俺はこの瞬間から、とてつもない悪寒に襲われた。この先の話は、聞いてはいけない気がした。
「うッ・・・うぅ・・・!!そうです・・・ポケモン・・・一匹の・・・
ピカチュウが・・・私たちが居た・・・後ろの、草むらから・・・飛び出してきて・・・
それで・・・!!それ・・・で・・・!!
いちかちゃんの持っていた・・・花を・・・奪い取って・・・!!道路の向かい側の・・・草むらに逃げたんです・・・!!」「・・・な・・・・・・ピカ・・・チュウ・・・?」「そのピカチュウを・・・うぅっ!!追いかけようと・・・して・・・いちかちゃんが道路に飛び出したら・・・走ってきた車といちかちゃんが・・・
あ・・・あぁ・・・ああぁぁッ!!ごめんなさい・・・!!私がついていたにも関わらず・・・!!本当に・・・!!」俺は吐き気に襲われ、頭の中が、得体の知れない何かに包まれていた。その中にはよく知っている一匹のポケモンのシルエットが浮かび上がっている。
イチカの手にしていた花を奪った、そのピカチュウというのは・・・まさか・・・・・・
「お”・・・お兄・・・ぢゃ・・・」「イ・・・イチカ・・・!!イチカァァ・・・・・・!!」俺はイチカの小さな手を握り締める。かつて、イチカから感じたぬくもりは、微塵も残っていない。
「あ”た、しの・・・み、つけ、た・・・おは、な”ぁ・・・!!・・・・・・
あ”の、お、はな・・・・・・!!ピ、ガ、ヂュ・・・に・・・ぬずま、れ・・・ちゃ・・・た・・・・・・」
「イチカ・・・!!何・・・で・・・何で花なんかを・・・!!」「ま”ま”、が・・・いっで、たもん・・・!
ずきな、ひど、に・・・!わだ、せば・・・ずっと・・・!い、っじょ、に・・・!!
いら”、れ”、るって・・・・・・!!ま、まが・・・言っでた、が、ら・・・!!
お兄ぢゃ、が・・・好き・・・だから・・・はな、を・・・・・・お兄ぢゃ、に・・・
いぢ、が・・・の・・・すきな”、ひと・・・おに、い、ぢゃ・・・ずっと・・・いっ、じょ、にぃ・・・・・・!!」
「イチカ!!もういいよ!!もうわかったよ!!
俺だって・・・俺だって、お前のことが好きだ!!・・・愛しているんだ!!
だから・・・・・・・・・イチカ・・・死なないで・・・死なないでくれよ・・・!!」「お”にッ・・・
ぢゃあ”・・・・・・!!あ”、
あ”ぁ・・・!!
しに、
だっ・・・・ぐ・・
な”、い”・・・!!こ、
わ”っ・・・い”っ・・・!!!こわ”、い”ぃ・・・
よ”、お・・・!!!」
「イチカ・・・・・・!イチカアアアァァァァ!!死ぬな!!お願いだ!!
いっぱい色んなところに・・・遊びに行くんだろ!?約束しただろ!?
それに・・・お前が・・・死・・・んだ、ら・・・俺は・・・俺・・・は・・・!あああぁぁぁぁぁ!!」「あ”、あ”あぁ・・・
おに”、ぢゃ・・・!!!だず”・・・げ、
だ、ずッ・・・げ・・・で・・・さむ、い、よ・・・・・・」
「イチカアアアァァァァ!!!死ぬな!!お願いだ!!!生きてくれよ!!
お前は・・・!!俺ッのッ・・・!!俺の・・・・・・!!
イ、イチ、カッ・・・・・・!!!俺とッ・・・一緒にッ・・・!!イチカアアァァァァァァァ・・・・・・!!」強く握り締めたイチカの手が、急激に冷えていく。
「ダメだ!!イチカ!!死ぬな!!死なないでくれ!!
遊園地も!水族館も!どこにだって連れて行くから!!約束しただろ!?
イチカ!!イチカアアァァァーーーーーー!!」「お”に、・・・ぢゃ・・・さ、む・・・い・・・・・・こ、わ・・・い・・・・・・た、す・・・・・・
お、に・・・ちゃ・・・・・・・・・・・・・・・・」「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」イチカは、最期の時まで、俺の目を見続けていた。
その目から溢れる涙は、とても美しく、儚いものと感じてならなかった。
夜。
俺は果物ナイフを隠し持ち、あのススキ畑へと向かっていた。
どうしても確かめなければならないことがある。
月の明かりを頼りにススキをかき分けて進む。すると、あの聞き慣れた鳴き声が聞こえてきた。
また、それに混じって、聞き覚えの無い声も聞こえる。
その二つの声は幸せに満ちた鳴き声だった。
「ピカッピィ~♪チャアァ~♪」
「ぴっかちゅ♪ぴかぴかぁ~♪」
子ピカだ。以前、ここで花飾りを作っていたメスピカとじゃれあっている。
薄暗くてよくは見えないが、メスピカの頭には、花飾りがのせられていた。・・・完成したのか。
俺は空気を読まず、2匹の前に姿を現す。ナイフはズボンの後ろのポケットに隠した。
「よぉ・・・」
「・・・!ピッカー!ピカッチャァァ~~~!!」
月の明かりに微かに照らされた子ピカの顔は、薄暗くてもハッキリとわかった。
幸せそうな笑顔を浮かべ、俺の元へと駆け寄ってきた。
「お前・・・メスピカとお付き合いできたのか・・・?」
「チャアァ~♪ピカッチュ///」
子ピカは照れ笑いをする。頬の電気袋がより赤みを増した。
「そうか・・・良かったな・・・。花飾りも・・・完成したのか・・・?」
「チャピッカ~!ピカッチュゥ~♪ピッカピィ♪」
まるで『俺がキレイな花を見つけたお陰で完成したんだ』と言わんばかりに胸を張り、誇らしげになる子ピカ。
腹の奥底で何かがこみ上げてくる。
「その花飾り・・・ちょっとよく見せてくれよ・・・」
「チャア?ピカァ~?」
「どんな花を付け足して完成したのか・・・見せてくれ」
メスピカに近づき、手を伸ばす。
「ちゃ!?ぴかちゃあ!?」
「ピ、ピッカァ!?チュピカァ~!」
俺の異様な雰囲気を察知し、メスピカは身を退けた。子ピカも俺の様子に困惑している。
「・・・いいから、見せろ!!」無理やりメスピカの身体を抑え付け、花飾りを奪った。
「ぴかちゃあぁ~~~!!ぴいぃかあぁぁ!!」
「ピガーーー!!ピガッヂュウゥ!!」
2匹は『何をするんだ!!』とわめき始めた。
俺は無視し、花飾りを凝視する。
月明かりに照られる花飾り。その中に、一際目立つ、赤くてキレイな花があった。
この時期に、たった一つ咲くか咲かないかの、希少な花。
間違いない。イチカが俺にプレゼントしようとした「いちのるりはな」だ。
何かが、俺の中で音を立てて弾けた。
俺は力の限り、花飾りを握り締めた。手の中で花がゴミのようにひしゃげた。
「ちゃああぁぁぁぁぁーーー!?」「ピ、ピッガアァァヂュウゥゥーーー!?」
子ピカが泣き叫びながら俺の足を殴る。俺は無意識のうちに子ピカを蹴り飛ばす。
「ッヂャアァッ!!ピ・・・ピッガァ!?」
「やっぱり・・・・・・」「ピカチャア!?」
「お前だったんだな」「ピガ・・・ピィ・・・!?」
「お前が・・・
お前がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」「ピッガァ!?ッヂャアアァァァーーー!!!!!」俺はナイフを子ピカの頬めがけて何度も振り下ろした。子ピカの鮮血が飛び散り、俺の顔を汚していく。
「お前が!!お前が殺したんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」「ピッガアアァァー!!ピガヂュウゥゥーーーッ!!!」「お前のせいだ!!お前のせいで!!!
俺の妹を・・・イチカを!!イチカを返せええええええええ!!
このクソネズミイィィィィィィィィィ!!!!」「ッヂャアァッ!!ピガッヂャ!!ヂュッアアアァァァァァ!!!」子ピカの顔はグチャグチャになり、バタバタと暴れながら絶叫している。しかし、俺の怒りに任せて振り下ろされる刃は止まらず、子ピカの顔面をボロキレのようにしていく。
自分の頬を濡らすのは、涙か、返り血なのかわからない。
「ぴっかちゃあぁー!!」メスピカが俺のわき腹に体当たりをしてきた。すぐに耳を掴み、子ピカの身体に何度も叩きつける。
「っぢゅあ!!っぴが!!っちゃあぁっ!!ぴがっぴぃぃ!!
ぴがあぁぁー!!ぴがぴがああぁぁ!!」メスピカはオスピカに助けを求めるように泣き叫ぶ。しかし、オスピカはメスピカと共に悲鳴を上げることしかできなかった。
「てめぇら・・・ふざけんな!!ふざけんなあぁ!!てめぇらのせいで!!イチカが・・・イチカが死んだあぁ!!
俺の!!たった一人の妹が!!俺を愛してくれた妹が!!てめぇらのせいで!!死んだんだ!!
てめぇらが殺したんだああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」メスピカの腹にナイフを振り下ろし、力いっぱい引いて腹を割く。
「ぢゃあああぁぁああぁあぁぁあぁあぁああぁぁああぁあぁぁあぁ!!!!!」「ビガアアァァァ!?ピガッヂュウウゥゥゥゥゥ!!!」子ピカがメスピカをかばって覆いかぶさる。容赦せずにナイフを子ピカの背中に振り下ろす。
「ヂュアアアアァァァァァァァァァァァァッッ!!!」「このクソネズミイィ!!てめぇのせいで!!てめぇなんかが居たからああぁぁぁ!!イチカを・・・!!イチカを返せよぉぉぉ!!!俺のイチカを!!返せ!!返せええぇぇ!!
」
「ッヂュアァ!!ビガアァ!!ビイィィィィィ!!!」
「約束してたんだ!!遊園地!!水族館!!色んなところに!!連れて行くって!!
約束したんだ!!!イチカを喜ばせるために!!イチカの為に!!
なのに・・・!!!お前が!!!お前が殺しやがった!!俺のたった一人の家族を!!
俺の大事な妹を!!!俺の!!俺の希望を!!お前が奪ったんだあああぁ!!!!
お前さえ居なければあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」子ピカとメスピカは、既に死んでいた。
俺はそれでもなりふり構わず、怒りと憎しみの切っ先を払い、血と涙で濡れていった。
「てめぇらが居なければ!!俺とイチカは今頃・・・!!ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!
俺も・・・お前らから!!全部奪ってやる!!
恋人も・・・家族も・・・全部!!殺してやる!!お前らが・・・俺の全てを殺したように!!全てを奪ったように!!
てめぇらみてぇなクソネズミを!!全員・・・!!殺してやらあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
あれから十数年が経った。イチカが殺されてから、俺の人生は死んだ。
ある朝、俺は血の匂いにまみれた虐待研究室で目を覚ます。
「あん時の・・・夢か」
ひどくだるい身体を起こし、研究所の裏庭にブサピカの死体を埋葬した。
「まともにポケモンを埋葬すんのは、あん時以来だな・・・」
俺は忌々しいネズミと出逢ったススキ畑の光景を思い出していた。
俺と死闘を繰り広げたメスピカ一家の死体は鉈でメッタクソに解体し、付近の森の中にばら撒いた。
それを喰らいに来る下等なポケモンを捕獲し、虐待研究の材料にしてやるのだ。
「クッソ・・・身体、痛ッてぇ・・・」
俺はふらつく足取りで研究所の中へ戻った。
世間は俺の野望を後押しするかのように、ポケモンの殲滅風土が出来上がっていった。
俺は人類の害となるポケモンの駆逐、研究に、日夜励んでいる。
ポケモンは人間の害でしかならない。
いづれはこの研究所の土地を開拓し、ポケモン虐殺施設を開設するのだ。
ポケモンを虐殺、駆逐する団員を募り、世間の一般市民にもポケ虐の輪を浸透させる。
全人類がポケモンを迫害し、世界からポケモンが一匹残らず姿を消す時。
その時が来たら、俺の人生は始まるのだ。
【ピカチュウ性欲処理チュウ!】
おわり
- 2012/12/11(火) 02:03:05|
- ピカ虐(長編)
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